声優と俳優の違いとは?求められるスキルと表現方法をわかりやすく解説

声優と俳優の違いを比較したイメージ画像(録音スタジオの声優と撮影現場の俳優) 声優・吹き替え論

ここ数年、映画やアニメの吹き替えで、俳優さんが声優として出演するケースが増えました。最初は私も「あれ?」と思ったものです。SNSの感想を眺めていても、「なんとなく違和感がある」「やっぱり本業の声優さんに任せてほしい」という声は、今もよく目にします。

でも、いろいろな作品を観ていくうちに、ひとつのことに気づきました。その違和感の正体は「演技の優劣」ではなく、“求められている役割の違い”なんだ、と。

ここからは、声優と俳優の違いを整理しながら、芸能人が声優に起用される理由と、違和感の正体がどこにあるのかを、私なりに辿ってみます。

声優と俳優の違いとは?

声優と俳優の違いを簡単にまとめた図|役割と表現方法の違い
声優と俳優は、どちらも「演技をする仕事」です。ただ、それを成立させるための手段が根本的に違う。だから求められるスキルも、向き不向きも変わってくるんですね。

声優の特徴

  • 声だけで感情や状況を表現する
  • 表情や動きには頼れない
  • 聞き手の想像力を引き出す演技が求められる

声優の世界では、映像があっても「声」がすべての情報の起点になります。同じセリフでも、トーンをほんの少し変えるだけでキャラクターの印象ががらりと変わる。怒りひとつにしても、声の質、息遣い、間の取り方次第で、別人のように見えることもあります。それだけ繊細なコントロールが要求される仕事です。
言い換えれば、声優は「見えないものを成立させる演技」をしているんですね。

俳優の特徴

  • 表情・仕草・動きなど身体全体で演技する
  • 視覚的な情報で感情を伝えられる
  • カメラワークや演出の助けも受けられる

一方の俳優は、声に加えて表情、仕草、身体の動き、さらにカメラワークや照明といった演出の力まで借りて感情を届けられます。使える道具の数がそもそも違うので、表現の選択肢は圧倒的に広い。いわば「総合的に感情を伝える演技」です。この差を頭に入れておくと、「どっちが上手い」ではなく「役割が違うだけ」だと思えるようになります。

なぜ俳優が声優に起用されるのか

ここまでの違いを並べてみると、「それなら、なぜ俳優さんを声優に起用するのだろう?」と疑問に思うかもしれません。

その背景には、演技だけではなく、作品との相性や知名度、話題性など、さまざまな要素があります。

特に知名度のある俳優さんがキャストに加わることで、普段アニメや映画をあまり観ない人にも作品を知ってもらえるきっかけになります。作品そのものの魅力に加えて、出演者をきっかけに興味を持つ人が生まれるわけです。

ただし、芸能人が起用される理由はこれだけではありません。制作側がどのような目的でキャスティングを行っているのかを知ると、その背景がさらに見えてきます。

制作側がどのような目的でキャスティングを行っているのか、詳しいビジネス構造については、芸能人が声優に起用される理由で整理しています。

なぜ“違和感”が生まれるのか

では、俳優さんの声に「違和感がある」と感じることがあるのは、なぜなのでしょうか。

大きな理由のひとつは、声だけでキャラクターを成立させることと、表情や身体の動きも使って演じることでは、求められる表現方法が異なるからです。

たとえば、声だけで感情を伝える場合は、声のトーンや息づかい、間の取り方などがより重要になります。一方、実写の演技では、表情や仕草などの視覚的な情報も感情を伝える手段になります。

そのため、俳優として自然な演技ができても、声だけの表現になると、普段とは違った難しさが生じることがあります。

つまり、ここで感じる「違和感」は、必ずしも演技の上手い・下手だけで説明できるものではありません。

実際にどのような「ズレ」が違和感につながるのか、音響や演出による影響も含めた詳しい内容は、声優の演技に違和感を感じる理由で詳しく解説しています。

それでも俳優起用が続く理由

それでも、俳優さんが声優として起用されるケースはなくなりません。

キャスティングは演技力だけで決まるものではなく、作品との相性や知名度、話題性など、さまざまな要素を含めて判断されます。

「誰が最も上手く演じられるか」だけでなく、「この作品をどのような人に届けたいのか」という視点も、キャスティングには関わっているわけです。

こうした制作側の事情を知っておくと、俳優さんが声優として起用された作品を観るときにも、「なぜこの人が選ばれたのだろう?」と別の角度から考えられるようになります。

少し私事になります。私は90年代のジブリ作品の頃から、子役上がりの役者さんをずっと追いかけてきました。そのなかで2000年代に入ってからいちばん驚かされたのが、神木隆之介さんです。
『千と千尋の神隠し』で湯婆婆の赤ん坊・坊の声を演じていたと知ったときは、「え、あの赤ちゃんの声を、あの子が?」と、しばらく信じられませんでした。続く『ハウルの動く城』のハウルの弟子・マルクルでは、ツッコミの間や息づかいまで声で計算されているように聞こえて、「この子はただ者じゃない」と思いました。公開当時の私の素直な感想です。
そのまま追いかけていると、自然と視界はジブリの外にも広がっていきました。

2009年公開の『サマーウォーズ』で主人公・小磯健二の声を聴いたときは、正直鳥肌が立ちました。声変わりを終えたばかりの高校生の声が、これほど瑞々しく画面に乗るのか、と。あとから知ったのですが、細田守監督は健二役の起用理由について「声変わり直後で、誰も聞いたことのない新しい声だった。その声がとても魅力的だった」と語っています(オリコンニュース/2025年12月13日)。この発言を知って、当時感じた納得感がようやく言葉になった気がしました。
翌年の『借りぐらしのアリエッティ』では、体の弱い少年・翔の、静かで繊細な息づかいまでが声に乗っていて、「この子は、声で年齢を重ねていくんだな」と感じたのを覚えています。

あれから十数年。神木さんは実写映画で主演を張るまでになりました。坊からマルクル、健二、翔へと、声が実際に年を重ねていくのを聴いてきた身としては、息が長い人ほど「自分の声や身体がどこまで届くか」を冷徹に自覚しているように見えます。少なくとも私にはそう映りました。声の仕事に臆病なくらい慎重に向き合ってきたからこそ、俳優と声優の両方で成立する稀有な存在になったのだろう、というのが私の勝手な推測です。

まとめ:声優と俳優は“優劣”ではなく“役割”の違い

声優と俳優は同じ「演技」という言葉でくくられていても、求められるスキルはかなり別物です。どちらが上かと比べるのではなく、「役割の違い」として理解するのが、いちばん正確だと思います。
俳優さんの声に違和感を覚えてしまうのは、演技が下手だからではなく、構造的な理由があるからです。この視点で作品を観ると、キャストを見る目の解像度が上がって、今までとは違った楽しみ方ができるはずです。
実際、私自身キャスト表を見るたびに、「この配役は集客なのか、それとも声の質を狙ったのか」と考えるようになりました。答えは分からなくても、そう考えながら観るだけで、映画の見え方は少し変わります。
声優と俳優の起用の違いは「演技力の優劣」ではなく、「作品の目的によって役割が分かれている」だけ。そう思えると、あのモヤモヤも、少しだけ軽くなるんじゃないでしょうか。

声優と俳優は、どちらも「演じる仕事」ですが、求められる表現方法には違いがあります。
だからこそ、俳優が声優として起用されたときに感じる違和感も、単純に「上手い・下手」だけでは説明できません。

実際に芸能人が声優に起用される背景には、作品の宣伝や話題性、ターゲットへの訴求など、制作側の事情もあります。
芸能人がなぜ声優に起用されるのかについては、芸能人が声優に起用される理由の記事で詳しく整理しています。

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